《7杯目》蓋棺事定な長寿に祝杯
写真を見て「ははぁ」と筆者の書かんとする意図を察せられた諸氏には拍手を。あなたも通(ツウ)ですなぁ。
9月2日96歳で崩御されたイギリス連邦の君主、エリザベス2世女王陛下は、ほぼ毎日アルコールを口にされると評判の女王であらせられ、しかもこの2つのボトルを抜きに女王の個性もDNAも語ることはできない。「開かれた王室」を標榜され国民に寄り添ってこられた女王だからこそ、その執務室にも持ち込まれるとされた庶民的銘柄がまことしやかに市中に囁かれ、やがてそれは公然の事実として公衆の耳目に触れることになった。その親近感の源泉たるや、ドライマティーニに新たな格と名称を与えたあの映画「007」に女王自身がDaniel Craigと登場してボンドガール役を演じるという、なんとも究極のお茶目な「開放ぶり」ではないですか。女性に「酒豪」や「呑兵衛」の称号を与えてもまあいいじゃない?と寛容な社会に変容していった実に70年に及んだ治世の時代のドラマティックな変遷に、一役も二役も百役も買っていらっしゃると筆者は見ていた。そしてご逝去。
国葬の棺には極彩色のロイヤル・スタンダード(王室旗)と王冠と剣と花とが添えられ、ご遺体にはわずかな装飾だけでウィンザー城に埋葬されたと聞く。でも、さすがに酒瓶が入棺されたという話はさてはてどこまでも聞こえてはこない。
66% Dubonnet:33% ginがエリザベス二世女王陛下のデュボネカクテルの黄金比、その母君であるエリザベス女王(ジョージ6世の后)の場合は70%:30%という。しかも女王陛下は日々のランチの食前酒として召し上がられていたとか。筆者含め、これで世の中の呑兵衛諸氏は大手を振って溜飲を下げられるというもの。「毎日」「昼から」吞んでいても、公務にいそしみ96年の生涯が閉じる2日前まで笑顔で職務を全うし、就任直後の英国女性首相トラス氏と立って談笑し、写真は生前に公開されていた。なんという生涯。やはり酒は百薬の長でした。万歳。
「人事は棺を蓋うて定まる(人間の真価は、死んでから決まる)」らしい。自分は「6:4のお湯割り」が黄金比、呑人不知な人生で、酒も入棺してもらいたいくらいな輩ではあるけれど、終わりて人が祝杯を挙げてくれるようなあっぱれな呑兵衛人生を生き尽くしたいものである。
合掌。Rest in Peace, Her Majesty Queen Elizabeth II.